入院症例14 他院から紹介された重症統合失調症患者

Key word  緊張病性昏迷 ジプレキサ筋注 寛解退院

20歳代女性

短大卒後、企業に3ヶ月間勤め退職。その後いくつか職を変えた。4年前強迫的手洗いが出現し精神科病院に通院を始めた。現在はルーラン(抗精神病薬)を処方されているが飲んだり飲まなかったりの状態。2週間前から不穏状態になり、脱力して倒れたり、興奮して意味不明の事を口走る。この数日は食事もほとんど摂らない。通院先の精神科病院への入院を本人が拒否するため、内科医院からの紹介で両親と共に当院受診に至る。

初診時
体をくねらせるなど奇妙なしぐさ(衒奇)がみられ、体を前後左右に揺すったりする。常同行動(緊張病の症状で同じ事を繰り返す)とも、ヒステリー発作とも考えられた。問いかけには全く反応無く、疎通はとれない。

診断
急性期治療病棟入院とし、ヒステリー発作と緊張病との鑑別治療的診断の為、リスペリドン液3mlを主治医自ら服薬させると嚥下する。しかし、同薬による鎮静効果は何ら認められず、過覚醒状態である事が伺われ緊張病であると診断した。

経過
2日目
デイルームで天井を向いて突っ立っている。無反応で、水を飲ませてみると全く嚥下できず口からこぼれる。しばらくすると眼球上転が起こり、右上方を凝視する。昏迷状態であり、自力では全く安全を確保出来ず危険な為隔離室に移室とし、内服困難である為、ジプレキサ(10mg)1A筋注3日間実施する。
その間全く疎通取れず、便不潔行為をしたり、室内を歩き回る行動がみられた。

3日目
多少食事自力で摂取可能となる。
ジプレキサ筋注に加え、リスペリドン液3ml/1日1回 を追加する(3日間)。

6日目
嚥下可能になった為、液剤から錠剤(口腔崩壊錠)に変更した。
処方
ジプレキサザイディス(10mg) 1錠 1日1回 夕食後

9日目
食事は可能となったが、発語はなく疎通もとれないため薬物を増量した。
ジプレキサザイディス(10mg) 2錠 1日1回 夕食後

15日目
発語なし。
しかし食事を食べるように言うと「コクン」とうなずき、何とか疎通がとれる。
表情も和らいでいる。

23日目
部屋で横になっているも、側に寄ると開眼する。
主治医:どうですか?>ご本人: ・・・(無言)
食事をしている?> ・・・(うなずく)
声が入って来る?>チェチェという音が入る(初めて返答あり)。

28日目
元気になった?> はい。
声は入る?> 「犯人がここにいる」とか「破産寸前」とか聞こえていた。でも今は大丈夫です。

奇異な行動もみられない為、同日開放サイドに病室移動する。

以後は急速に改善が見られOT活動に参加して携帯のストラップ作りなどする。

49日目
幻覚などまったくないと言うが、「ジイ―ツとしていられない。そわそわする。目が上を向く」と言う為、アカシジアと診断し減薬した。
処方
ジプレキサザイディス(10mg) 1錠 1日1回 夕食後

56日目
寛解状態で退院に至る。

退院後
ジプレキサ2.5mgまで減量したが不安定となった。この為ジプレキサザイデス5mg1錠(夕食後)に増量したところ安定した。

退院後1年後
症状は安定し、資格取得をめざし勉強をしている。

診療のポイント
統合失調症が軽症化している現在にあっては、重度の緊張病性昏迷状態を呈した稀な症例と言える。無反応で、水さえ飲む事さえ出来ない緊張病性昏迷状態が数日間持続した。このような病状に最近発売されたジプレキサ筋注は著効を示し、以後もジプレサ単剤治療により寛解退院に至った。統合失調症の治療に際しては適切な薬物の選択と用量の決定がポイントである。

 

入院症例14 他院から紹介された重症統合失調症患者 への2件のフィードバック

  1. 笠○ のコメント:

    14才から幻聴などで精神病院に入院。以後在宅で住むことは出来ます。お風呂、買い物は少ないが出来る。掃除・お風呂は気が向けばするがほとんど出来ない。症状は今のところ落ち着いているものの何故か掃除・お風呂などができず通院もサチュレーションも85~91まで下がるヘルパー福祉でタクシーを無料でできるようにPSWが取り計らっている。今は障害年金1級だがこれから先のことばかり考えてもし来年更新の時一級のままでいられるのかとても不安

  2. 西川 正 のコメント:

    最近新聞紙上などで、障害者年金受給基準の地域格差問題や減額されたなどの記事がみられるための御心配かと思われます。私にはどの様な診断書により1級受給されているのかは不明ですので、ここは診断書を書かれた主治医に相談されるのがベストだと思います。

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