入院症例12 パニック障害から10年間昼夜逆転生活

Key word  昼夜逆転 引きこもり 多剤処方 短期入院 デイケア 就労支援事業

40歳代 男性

実業高校卒後京阪神で正社員として就労。20歳代でパニック障害となりバスやエレベーターに乗れなくなり退職。以後はアルバイトを転々とした。数年後アルコール依存症となり精神科病院で3回入院治療を受けた。30歳時幻聴出現し、再び精神病院で入院治療した。以後就労はしていない。現在母親と二人暮らし。この10年は某病院で通院治療中をしている。しかし、夜は眠れず、朝方より夕方にかけて眠る昼夜逆転状態であるため、入院治療を勧められ当院紹介となる。

当院初診時
病歴を聴取していると「苦しくなった。顔から血の気が引く。喉も詰まった感じがする」と訴える。ヒステリー発作又はパニック発作と考えたが、まず直ちに苦痛を取る事が信頼関係の醸成に繋がると考え、セルシン10mgの筋注を行うと間もなく楽になった言い、笑顔を浮かべる。満床であったので入院予約とした。
紹介医の処方は、抗うつ薬2剤 抗不安薬2剤、睡眠導入剤4剤、気分安定薬2剤、抗精神病薬2剤、漢方薬など3剤、計15剤、34錠3包/日と多剤併用処方であった。

経過
入院時
初診の5日後急性期治療病棟(開放)に入院となる。
午前中入院。表情冴えず、落ち込むと訴え軽度うつ状態。
パニックからの発症であるのでパニック障害に対する薬物療法を主眼とし、パニック障害治療に用いる抗うつ薬を主剤に、抗不安薬、睡眠薬、さらに確実な睡眠が得られるように十分量のレボトミンを処方した。
尚、入院期間中処方変更は行わなかった。
処方
1)ルボックス(25) 3T  リボトリール(0.5)3T  1日3回毎食後
2)ベンザリン(10) 1T  レボトミン(25) 1T  1日1回就寝前

入院日の睡眠状況(看護記録より)
前夜は眠れた方で眠気はないと言い、日中はホールでテレビを見たり、自室で過ごし、昼寝をする事はなかった。
21時の消灯時は入床している。22,23時は睡眠中。
23時20分:目が覚めたとナースステーション訪れ、レンドルミン(睡眠導入剤)を1錠服用し、以後入眠。
午前3時:今目が覚めたとホールに出て来ており、看護師が声をかけると「鼾をかいていたでしょう?」と話しかける。その後再入眠して、4時覚醒。
翌日診察時に睡眠状態を尋ねたところ、「ナースの声かけに何回か目が覚めたが、家では全く眠れなかったので眠れた方です」と返答する。

2日目(看護記録より)
昼食後昼寝を多少取る。他はホールで他患と談笑して過ごす。
21時:睡眠中。
23時覚醒し、もう大分眠ったから起きておくと話す。イライラすると訴える為、レンドルミンを服用して再入眠。
24時:大鼾をかき睡眠中。
以後覚醒せず、5時に覚醒する。

3日目以降は、夜中に覚醒しても頓服のレンドルミンは服用せず再入眠出来、21時から翌朝5時まで安定した睡眠が取れるようになった。

8日目
診察時「大分良くなりました。初めてOT活動に参加しました。良く眠れて嬉しいです。うつの方も70%位に回復していると思います」と表情良く話される。
10日目
「元気になりました。ご飯もおいしいし、最低でも5時間は眠っています」と話す。
今後はデイケアに通所するように勧めておく。
15日目
「本も読めるし、もうほぼ100%の状態。デイケアには隔日に行こうと思う。」そろそろ退院したいと口にされる。
19日目
すっかり元気となり、「100%と言うか、90%までには回復した」と言う。気力も充実し、表情も引き締まった状態で退院。

退院1週間後より規則的隔日にデイケア通所している。
退院7週目
就労支援事業所「しおかぜ」体験利用を開始。
退院6ヶ月目
主治医:如何ですか> ご本人:最近は眠り過ぎです。
「しおかぜ」はどうですか>食器洗いを午前中にしている。大分自信が出てきました。早くここに来れば良かったのに、それが悔やまれます。

診療のポイント
昼夜逆転の為10年間引きこもり状態であったが、3週間足らずの入院治療により睡眠障害が改善した。退院後も睡眠覚醒リズムは保たれ、活動的となった。
そのポイントはまず1)適切な薬物療法だったと言えよう。前医では睡眠導入剤計4種、5錠処方されていたが、本症例のような難治性の不眠ではレボトミンやセロクエルのような鎮静系抗精神病薬の十分量を夕食後又は就床前に処方する事が必要である。2)入院により睡眠状況の正確なモニターと日中活動が充実した事。3)退院後もデイケアや就労支援事業を組み合わせて継続的に生活リズムを整えた事により、活動的生活が送れるようになった(6ヶ月時点)。

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