外来症例2 突然発症する歩行障害と手の痛み 

key word   身体化障害 老齢 生活状況 疾病利得

 60歳代女性

数年前まで就業していた。7年前に心筋梗塞、2年前に脳梗塞の既往があり、右片麻痺、右半身のしびれ、構音障害が残った。現在内科にて高血圧症など治療中。当初長男の在住する関西のケアハウスに入所していたが、転倒し大腿骨骨折したため入院した。退院後同地での施設入所を希望したが見つからず、遠く離れた出身地に一人帰省し新たなケアハウスに入所し半年が経過した。右手の痛みや突然に起こる歩行障害が頻回にみられるため、精神疾患を疑われ、内科医より当院に紹介となる。

診察

問診により次のことが判明した。

現在のケアハウスは自立した老人を対象にした施設である。突然の歩行障害は主に受診先の医療機関で起こる。通院はケアハウス職員が車で送迎してくれるが、それ以降はすべて自身で行わなければならない。診察までの待ち時間が長い時に症状がよく起こる。

ご本人は「地元に帰ったが、ケアハウスの生活は何から何まで自分でする必要があり、辛い」と訴える。長男の近くの施設が良いかとたずねると「そうしたい」と答える。

診断・治療・対策

突然の歩行障害は主に受診先の医療機関で起こる。特に待ち時間が長い時に起こるという症状発現に状況依存性がある。他者から援助を受けたいのにそうして貰えない無意識の欲求不満から症状発現している心理機制が推察され、身体化障害(ヒステリー)と診断した。

生活環境の見直しで症状は軽減・消失すると判断し、薬物治療は行わなかった。

以下は内科医への返信である。

診断 ヒステリー

右手の痛み、突然に起こる歩行障害などは身体化障害(ヒステリー)によるものと診断致しました。現在の自立を強いられる生活環境になじめず、以前のように息子さんの近くでの生活を求めての症状形成(疾病利得)と思われます。この事についてご子息には説明しましたが、薄々のその事を御理解の様子でした。

 診療のポイント

生活状況の詳細な問診により発症状況が分かり、無意識の欲求不満から症状発現するヒステリーと診断した。本人に対しては無意識の葛藤を言語化による意識化(長男の近くの施設に入りたい)して貰い、家族には本人の欲求不満に対する現実的な対応を考慮して貰うように促し、受け入れられた。無意識の葛藤を1回だけの問診により意識化でき、その葛藤処理は現実的な対処のみで解消できた比較的稀な例である(⇒参照3

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