参照12:覚醒水準とうつ病の薬物療法

精神疾患の病状を見極める時、覚醒水準という概念を用いると理解しやすい。覚醒水準とは、脳の活動状態(活発さ)を表し、脳の過度の興奮状態を過覚醒と呼ぶ。一般的に哺乳類では覚醒水準の高まりにより行動は活発となるが、覚醒水準が高過ぎると逆に行動できなくなり(すくむ)、あまりにも刺激が強すぎるとショック死する。

統合失調症の病態は本質的に脳の興奮(過覚醒)で、統合失調症の致死性緊張病と言われる病態は過覚醒が死をもたらす状態と考えられる。

躁うつ病(双極性障害)の躁状態では活動性が亢進しており覚醒水準が高くなっていることは容易に理解できるであろう。

図1に統合失調症と躁うつ病(躁状態)における覚醒水準と活動遂行力の関係を示す。

ここでいう活動遂行力とは、物事を考えたり行動するなどいわゆる生活を営む力である。人は覚醒水準が下がることで睡眠(休息)をとり、覚醒水準が適度に上がることで日々の生活を営んでいる。しかし、統合失調症では、脳が過度な興奮を起こすことで逆に活動遂行力が低下し無言・無動の昏迷状態となる。これら一連の関係は刺激ー反応逆U字曲線(逆Uモデル)として知られている。躁うつ病の躁状態では活動性は高い状態に留まり、昏迷を起こす事はない。

うつ病の場合はどうであろうか。うつ病は覚醒水準が低下していると思われがちであるが、低覚醒のうつから過覚醒状態のうつまでその病態は様々で、その見極めと抗精神病薬を如何に適切に使うかが治療のポイントとなる。様々な病態がなぜ表出するのか。これらを説明するための私見を図2に示した。

ストレス状況下では行動に関するアクセルであるカテコールアミン(主にノルアドレナリン)もブレーキであるセロトニンも初期には同時に放出されると考える。つまりうつ病の初期ではエンジンは噴かし、ブレーキは踏んだような状態と言えよう。このため焦燥うつや、拒絶や妄想など精神病像を伴ううつ病となり、アクセルを噴かした状態を遮断するために抗精神病薬の投与が必要となる。しかし、時間の経過とともにセロトニンのブレーキ作用が働きエンジン出力の低下が起こり意欲低下うつ、過眠うつとなると考えられる。うつ病性昏迷は急ブレーキを踏んでエンジンストップしたような低覚醒状態によるものと考えている。その病態ではカテコールアミンの遮断薬である抗精神病薬は使用すべきではない。

 

 

参照12:覚醒水準とうつ病の薬物療法 への3件のフィードバック

  1. sakuraimac のコメント:

    こんにちわ。双極性障害と診断され投薬により躁状態は治まっております。ただ不思議なのは、①うつ状態が全く無い。②躁状態が本などの説明と微妙に違うところがある。ということがあげられます。私の躁状態は、覚醒状態と呼ぶととても自分としてはしっくりきます。あと変な話しですが、躁状態の時は視力がかなり良くなりました。このような事例はありますでしょうか。

  2. 西川 正 のコメント:

    うつ状態がまっくない場合は、双極性ではなく単極性であり、躁病だと思います。視力に関しては視力検査で改善しているのでしょうか?そう状態の時は景色が綺麗に見えるなど言う人はいますが、視力検査で視力が改善した例は知りません。ご自身の感じ方ではないでしょうか。

  3. sakuraimac のコメント:

    お忙しいところ、ご返答どうもありがとうございます。私の場合、身体表現性障害と別の医師から診断された身体苦痛がかなりあります。その様子を見て最近主治医から「仮面うつ病」と言われました。気分は全くうつではないが身体に現れるのもうつ病だとするならば、躁うつ病という診断も納得できます。視力は残念ながら検査はしてませんが、かなりの近眼にもかかわらずにメガネなしでテレビを見ていたので、勘違いではないような気がしてます。ちなみに、戦時中に軍隊がパイロットの視力向上のためにヒロポンを大量に使っていたという話が非常に印象に残っています。何故なら、私の躁状態は覚せい状態に極めて近いと感ずるからです。

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