外来症例26 生活指導が奏功した心因性発熱

Key word  不明熱 内科的治療不能 朝夕2回熱型モニター 長時間労働

19歳 女性

単身で受診。高校卒業後1年間フリーター。今年の3月からエステ運営会社に勤めている。仕事は好きで対人関係も問題はないが、勤務時間が長いのが辛い。長い時は夜10時まで、1日12時間位働く。2カ月位前から体がだるく、体温を測定してみると微熱がある。時には38度台の発熱をする時もある。内科クリニックと総合病院内科を受診し、検査を受けたが異常はなく、治療法はないと言われた。10月になり精神的なものかも知れないと思い当院受診に至る。

初診時
体温36.8℃     血圧141/79mmHg    脈拍81回/分
皮膚は湿潤
睡眠:12時に寝て、朝6時にスッキリ目覚める

朝夕2回体温測定を行い3週間後に受診するように指示した。血液生化学検査も行った。
薬剤の処方なし。

経過
3週間後
血液生化学の結果は炎症反応や甲状腺機能亢進は認められなかった。

熱型
朝は全て平熱。
夕は最高37.4℃ 他は37度台の微熱持続している。
4連休中は朝夕共に37度以下の平熱であった。

就労と発熱の因果関係が濃厚であり、心因性発熱の可能性が高いと考えられた。そこで、本人のスマホで心因性発熱を検索させ、その場で読んで貰った。また当ブログ「外来症例17 過眠症と診断された過労性過眠」は本人と同い年の過労症例であるため、同様に読んで貰う。その後、まだ社会人としての生活習慣が身についていないので、ペース配分が解らず、無理をして「脳がオーバーヒートして熱発する」と説明した。本人納得された様子。

以下の対策を提案した。

  • 出来るだけ早く寝る。
  • 疲れたら、上司に休憩を申し出る。
  • 夜10時に帰宅するまで何も食べていないため、19時頃にチョコレートを食べる。
  • それでも夕方の微熱が続けば、診断書で労務軽減を依頼する

5週間後
気持ちも体も楽になったと笑顔で受診された。
対策に関しては、夜間入床時間は不変。職場には何も話さなかったが、休憩時間は仮眠を取るようにした。夕方チョコレートも食べた。

体温測定結果
朝 全て平熱
夕 ほぼ平熱   37度を超えた日  37.0*2日間  37.1 *1日  37.3* 1日

発熱日は生活習慣の改善により著明に減少し、過労が原因の心因性発熱と確定診断した。
生活習慣改善によりほぼ平熱に改善したので、治療終結とし、今後発熱にあまり捉われないようにとアドバイスした。

診療のポイント
心因性発熱には解熱鎮痛剤は無効で、精神安定剤や抗うつ薬が有効とされている(⇒参照25)が、本症例では、まず朝夕2回一定期間の体温測定を行って貰い、生活状況と発熱の因果関係を探った。長時間労働による過労が発熱の原因と推察されたので、疲労を緩和するように生活環境の改善を提案した。さらに本人の工夫を加えた実際的な生活改善の実践により、発熱はコントロールされ、倦怠感などの自覚症状も改善した。安易に薬物に頼らず、熱型と生活状況との因果関係を突き止め、対策を講じた方略が受診後早期に治療終結に至ったポイントと言えよう。

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