外来症例25 各科で身体疾患と誤診された身体化障害

Key word   耳鼻科 脳神経内科 眼科 心療内科 葛藤

30歳代女性
数年前、不眠・不安症状で心療内科を受診し2年間治療をしたことがある。
最近仕事が多忙であったが、1週間ほど休みをとった。ところが、出勤日の朝、回転性の眩暈で立てないため2日間家で寝込んだ。何とか起き上がれるようになったので耳鼻科を受診したところ、メニエール病として薬が処方された。脳由来の症状の疑いもあり、総合病院脳神経外科へ紹介となる。また、「光が眩しく字の読み書きが困難で、スマートフォンや運転も出来ない」ため、眼科を受診した。視力に問題はなく、ドライアイとして点眼薬を処方された。眩暈で寝込んで以来、恐怖感があり、前述の心療内科を受診したところ、抗うつ薬など以前と同様の薬物が処方された。発病以来20日経つが、身体症状も一向に改善せず、不安・恐怖感も軽減しない為、当院受診に至る。

初診時
「仕事以外にストレスがありますか?」と聞いたところ、「ある」と答えられた為、家庭問題が原因であろうと推察し、それについて尋ねた。
ご本人は、それまで抱えていた様々な葛藤を、堰を切ったように語り始めた。筆者はそれをじっと傾聴した。

診断
多彩な心身の症状と聴取した内容から、葛藤エネルギーがマグマのように噴出して身体症状に転換した「身体化障害」(⇒参照3)と診断した。

ご本人には「葛藤を全部吐き出された様子なので、その事だけで楽になられると思うが、抗ストレス効果のある薬物を処方するので、1週間後に受診さるように」と指示した。

処方
1)
セレナール(10mg) 2錠
1日2回 朝・夕食後 (1回1錠)
2)
スルピリド(100mg) 1錠
ブロチゾラム(0.25mg)1錠
1日1回 就寝前

経過
翌日
「すっかり楽になったので、お礼を言いに来た。ただもう少し眠れるようにして欲しい」と言われるため、以下追加処方とした。
ロゼレム(8mg) 1錠
1日1回 就寝前

1週間後
目も次第に良くなり、車の運転もスマートフォンも出来るようになった。
葛藤の原因は、簡単には解決しないものの症状はほとんど消失している。

主治医:現在、どんな症状が残っていて困りますか?>
ご本人:追加薬で良く眠れるようになったので、2日前からブロチゾラムを半錠にしたがよく眠れている。ただ、時々不安になります。

服薬継続されるように話し、ブロチゾラムを減量した。
処方
1)
セレナール(10mg) 2錠
1日2回 朝・夕食後 (1回1錠)
2)
スルピリド(100mg)  1錠
ブロチゾラム(0.25mg)0.5錠
ロゼレム(8mg)  1錠
1日1回 就寝前

診療のポイント
起きる上がることが不可能なほどの眩暈で発症し、多彩な症状のために各科を転々と受診したケースである。難治であった精神・身体症状を、1回の面接で「身体化障害」と診断し、葛藤を吐き出さす精神療法により1週間でほぼ完治した。早期回復が図られた要因として、以下4点を挙げることができよう。
1)初診面接の経過の中で、家庭問題が葛藤の主因であると看破し、じっくり時間をかけて話を聞いたこと
2)葛藤を自由に語らせ、意識化させ、抑圧されていた葛藤を開放したこと
3)葛藤が身体症状に転換することを理解させ、納得させたこと
4)薬物療法が適切であったこと

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