外来症例24 長期不治であった舌痛、頭痛、耳鳴りの診断と治療

Key word  高度肩こり 後頭神経痛 三叉神経痛 テグレトール

70歳代女性
5年前大腸癌の手術を受けた。術後5カ月位から、舌の痛み、頭痛、耳鳴りが出現。外科の主治医に相談したところ精神科クリニックを紹介され、うつ病と診断された。薬を処方されたが、眠くてたまらず、その事を言ったら治療打ち切りとなった。それ以後はかかりつけ医を受診。筋肉の凝りだろうと言われ、筋弛緩薬を処方された。その後も色々処方変更されたがほとんど効果なく、看護師の友人の勧めで発症から5年後当院初診となる。

初診時
穏やかに病歴をきちんと話される。
舌から唇が痛い。時には腫れることもある。
頭痛は後頭部を締め付けられる感じがする。

触診してみると、両肩凝り著明。
後頭神経頭蓋骨起始部圧迫による放散痛あり。
三叉神経に関しては、起始部圧痛あり。また顎部軽くタッタピングにて疼痛発現する。
口腔内を診ると、歯の乱れ著明。
口腔内由来の疼痛も考えて、当日は処方せず総合病院口腔外科を紹介した。

【紹介状】
病名:舌痛症
本日舌の痛み、肩こり、耳鳴りを訴えて受診されました。
重度の肩こり、三叉神経領域の痛みがあります。
舌の荒れは認められませんが、歯が極めて乱れており、
自分でも歯が原因でこの様な症状が出現したのではないかと考えておられます。
口腔外科的に御高診下さり、必要であれば御加療頂けば幸甚です。

1カ月後
口腔外科からの返信を持参して受診。
【診断書】
診断:口腔内心身症疑い 口腔乾燥
上記診断しました。基本的には対症療法になりますが、口腔乾燥もありますので、口腔内保清を行う目的で含嗽剤を処方し、当科にて経過を診たく存じます。

「うがい」をしているが変わりない。凝りと頭痛が困ると訴えられる。

三叉神経痛、後頭神経痛に対してはテグレトール(抗てんかん薬、三叉神経痛治療薬)を肩こりと舌痛にはセレナール(抗不安薬)を処方した。
処方
1) セレナール(10mg)2錠 / 1日2回  朝・夕食後  (1回1錠)
2) テグレトール(100mg)1錠 /1日1回  夕食後

治療経過
処方開始 2週間後
凝りも頭痛も耳鳴りも改善した。
口の中も気にならなくなった。
少し眠気がある。
表情も明るくなっておられる。

3カ月後
夕方になると多少口がぴりぴりするが、以前の事を思うと雲泥の差だと話される。
以前は頭皮がぴりぴりして櫛が使えなかったが今は大丈夫ですと言われる。
顎部タッピングしても痛みは無い。

診療のポイント
三叉神経痛や後頭神経痛は、座骨神経痛などと同様な末梢神経痛であり、テグレトールが著効する場合が多い。舌の感覚神経は主に舌咽神経であり、舌痛症に対してテグレトールが有効であったのか、心身症としての舌痛症に対してセレナールが有効だったのか定かではない。
筆者は三叉神経痛や後頭神経痛を疑った場合は神経根起始部の圧痛点の放散痛の有無の確認や、神経支配領域のタッピングなど触診を欠かさない。このような診断に基づき処方薬を決定する事がポイントと言えよう。

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