外来症例20 28年間持続した重症チックの薬物療法

Key word  心理療法 薬物併用療法 カタプレス リボトリール リスペリドン

30歳代 男性

小学生時、顔をしかめ首振りなどを呈するチックを発症したが、特に治療は受けていない。中学生頃には一時軽快したものの成人になっても続く為、28歳時内科医を受診しセレネースを処方された。しかし、眩暈・フラツキがあり処方中止となる。同時期に精神科クリニックで抗うつ薬とリボトリール処方されたが無効であった。ジアゼパムも無効で、眠気強く服用を中止した。

現在内科疾患のため治療を受けている。「チック症により仕事に支障がある」との本人の訴えを内科主治医が憂慮し、専門医の心理療法等が必要と判断されて当院紹介となる。

初診時
顔面を含む全身の筋肉にチック(速い筋肉のピクツキ)が認められる。触診により横隔膜のピクツキも認められるが、シャックリや音声のチック及び汚言はない。面接場面でも持続的にチックが認められる。緊張時や仕事中はチック増強するとのこと。

重度チック症と診断した。汚言症など認めない為、トウレット症候群ではないものの、長期持続する重度チック症である為、トウレット症候群に準じた治療を行うこととし、前医の治療を参考に、まず中枢性降圧薬であるカタプレスを処方した。

処方 カタプレス(0.75mg)2錠 1日2回 朝・夕食後 (1回 1錠)

治療経過
1週間後
カタプレスは効果がなく体が重いと訴える。錐体外路症状に有効なリボトリールを追加処方。
 処方 
  カタプレス(75μg)2錠
  リボトリール(0.5mg)2錠  1日2回 朝・夕食後 (1回 1錠)

2週間後
自覚的には多少良いみたいと話される。
頻度は不変であるが、チックの強度は弱くなっている。抗精神病薬であるリスペリドンを追加処方した。
 処方
  1) カタプレス(75μg)2錠
     リボトリール(0.5mg)2錠  1日2回 朝・夕食後 (1回 1錠)
  2) リスペリドン(1mg) 1錠 1日1回 就床前

3週間後
最近は軽い時もある。全体的には随分楽になったと言われる。
頻度・強度共に初診時よりは随分減弱している。前回処方を継続した。

7週間後
ほとんどチックは消失して、楽になったと言われる。
面接場面ではまったくチックは消失している。
ただリスペリドンは体がだるいし、自分の体ではないような気がするので半錠にした。そうしたらそれらの副作用はなくなったと話される。
リスペリドン著効したと考え同薬単剤として処方した。
処方
  リスペリドン(1mg) 0.5錠1日1回 就床前

11週間後
多少チックが出現する。
チックは下肢が主。腹壁の収縮が1回/秒程度認められられる。
3剤併用処方に戻した。
処方
 1) カタプレス(75μg)2錠
    リボトリール(0.5mg)2錠   1日2回 朝・夕食後(1回1錠)
 2) リスペリドン(1mg) 0.5錠 1日1回 就床前

15週間後
診察場面ではチックは消失している。楽になった。仕事中には多少チックはあるが、耐えられるレベルだと話される。

その後、リスペリドンとカタプレス、リスペリドンとリボトリールの2剤併用効果を検討した。両薬剤の併用はほぼ同等の抑制効果が認められたが、3剤併用療法の治療効果には及ばなかった。
最終処方
 1) カタプレス(75μg)2錠
    リボトリール(0.5mg)2錠  1日2回 朝・夕食後(1回1錠)
 2) リスペリドン(1mg) 1錠 1日1回 就床前

上記処方にて小学生時代より持続していたチック症は、ほぼ完全に消失した。

診療のポイント
チック症は幼少時に発症するが、その多くは青年期から成人になると軽快したり、全く消失する場合が多い。幼少時期のチック症に対しては家族療法などの心理療法が行われるが、成人になっても持続するトウレット症候群(汚言症を伴うチック)に対しては本症例に使用されたハロペリドールやカタプレス等が使用される。 近年ではカタプレスの無効例に対しては非定型抗精神病薬のアリピプラゾールやリスペリドンが推奨されている。28年間持続した、ハロペリドール抵抗性(副作用出現の為、有効性に関しては十分検討されていない)のチック症にはリスペリドン、カタプレス、リボトリールの3剤併用が著効した。難治性チック症は様々な神経伝達物質の関与が想定されるようであり、有効と報告されている薬剤の単剤療法のみでなく、それらの併用も視野に入れて薬物療法を行う事がポイントと言えよう。

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